2018年7月26日

こんにちは、佐伯尊子です。2017年12月6日にIEEE802.3bs 200Gb/s and 400Gb/s Ethernet の規格が制定されました。制定当初は限定された人しか閲覧できませんが、半年を経て(登録は必要ですが)フリーで閲覧できるようになりました。今回は、制定された200G/400Gの規格から、これらの速度を利用するために、私たちはどのような点に注意すればよいか、物理層の特にMPOコネクタを中心に考えたいと思います。

(1) 制定された規格

200GbEと400GbEの2速度、短距離のSRから10kmのLRまで7種類が制定されました。表1にまとめます。

表1 IEEE802.3bsの速度と最大距離

それぞれ詳細に確認していきましょう。

(2) 400GBASE-SR16

MMFは400GbEのみとなりました。25GbE×(16芯送信・16芯受信)で400GbEを実現します。100GbEを10GbE×(10芯送信・10芯受信)で実現したように、今度は25GbE単位で光ファイバを束ねて送受信します。

(2)-1 仕様概要

OM1やOM2の古い光ファイバは40GbE/100GbEが制定された際、既に利用範囲外になってしまいました。今回も規格からこの2種類のMMFは除外されており、OM3以上のグレードを利用します。手元の光ファイバの仕様が分からないときは、色で判断せず、コード長手方向に印字されている表面印刷を確認してください。

表2 400GBASE-SR16の配線に要求される規格

(2)-2 MPOコネクタ

図1に示すように、送受信には32芯MPOを用います。400GbEのSR用に初めてお目見えしました。キーを上に、上段16芯が送信、下段16芯が受信となります(図1参照)。12芯MPOとは別に、ANSI/TIA 604-18 (FOCIS-16)にて2015年に規格化されました。ISO/IECやJISは、12芯の従来のMPOは既に規格化されていますが、16芯タイプは現在制定中のようです。

図1 MPO-16 32芯MPO (写真提供:株式会社フジクラ)

実物を比較してみましょう。図2に、今までの24芯MPOと、新たな仕様の32芯MPOを並べてみました。32芯MPOは、24芯MPOと比べ、キー位置が左側に寄って(キーシフトして)います。また、コネクタピンの太さも細く、その位置は24芯MPOと比べ、若干外側になっています。これは12芯MPOと16芯MPOをうっかり接続させないように、見た目で分かる工夫になっています。キー位置がコネクタ中心に無ければ、16芯/32芯MPOだな、と覚えてください。

図2 24芯MPO(左)と32芯MPO(右) (写真提供:株式会社フジクラ)

12芯MPOと24芯MPO・16芯MPOと32芯MPOの違いは、2本のコネクタピン(若しくはピン用の穴)の間に1段もしくは2段の丸穴(にみえる光ファイバ端面)が整列しているかで確認するしかありません。目視で確認することが多いかと思います。必ず確認するコネクタ端面と反対側の端が解放されている状態で行ってください。MMFでもSMFでも、単芯でも多芯でも、コネクタ端面を真正面から覗いては絶対にいけません。万が一コードの反対側が光モジュールに接続され、かつ光が出ている場合、上段の「送信光ファイバ」から近赤外レーザー光(可視光の外側の波長)が16本分出ています。それが目に直撃し網膜に損傷を与えるからです。ご自分の目を守るため、日頃から気を付けていただければと思います(MPOだけでなく、単芯のコードやパッチパネルも同じです)。

(2)-3 チャネル損失

400GbEが許容できる損失は、10GbEの規格と比べ、40GbE・100GbEの規格であるIEEE802.3baの時に、半分程度と、大幅に減りました (詳しくは、100ギガ時代のLAN配線(3) を参照ください)。OM3を利用した場合は、最大距離70mで、そのチャネル損失は1.8dBです。チャネルとは、接続元の機器のパッチコードから接続先の機器のパッチコードまでを指します。範囲と損失について、具体的に確認してみましょう(図3参照)。

図3 400GBASE-SR16のチャネル長と損失

400GBASE-SR16を実現する際、1回線に必要な芯数が32芯のため、既存の単芯収容のパッチパネル1枚分を使い切ってしまう可能性があります。そのため、既存の配線には手を付けず、この配線専用に32芯単位で扱えるトランクケーブルや、MPOコネクタを用いることが賢明だと思います。既存の単芯パッチパネルから32芯分を選んでFan-Outケーブル (もしくはBreak-Outケーブルと呼ばれています)で接続するやり方は望ましくありません(図4参照)。

図4 Fan-Out (Break-Out)ケーブル例 (写真提供:株式会社フジクラ)

最大の理由は、片側はMPOであるにも関わらず、もう片端が32本もコネクタが付いているコードになるため、その取り扱いが非常に難しい点です。単芯と多芯の変換部も、32芯分となると、写真以上に大きくなり、変換部を上手くラックに固定することも難しくなります。更にこの32芯のどれがどの対になるのかを確認しながら接続することになります。正直ネットワークエンジニアの方々が、そこまで理解して配線することを考えると、その時間で機器の挙動の確認をお願いしたい気分です。ですので、32芯ひとまとまりで扱うことが望ましいと思います。また、全長に渡る損失が厳しく制限されているため、ラック間で利用する場合に必要となる接続点は、図5に示すように、コネクタ~コネクタまでの接続が2か所合計で1.5dB(一か所平均0.75dB)以下になるようなコネクタ接続であることと、光モジュール間は1.8dB(OM4やOM5は1.9dB)以下でなければなりません。データセンター等では、機器間の接続が2か所以上になることがあるため、1か所当たりの接続損失は、0.75dBよりも低いことが望まれます。また、ラック間の配線だけでなく、もっと短いラック内(もしくは隣接ラック間)で直接機器間を接続することも多いかと思います。そのときは、数mの両端MPO付きコードを用います。光モジュール直結であれば、接続損失を考えずに済みますので、1.8dBを下回ることは大いに予想されます。だからと言って、たとえ購入したばかりの未開封のMPOコードであっても、コネクタの端面を清掃せずに接続するのは危険です。購入直後のコードであっても、(6)-1で紹介する16芯用のMPOクリーナーでしっかり清掃を行ってから、接続してください。

(3) 200GBASE-DR4・400GBASE-DR4
(3)-1 仕様概要

乱暴に言うと、200GBASE-DR4は、25GをPAM4変調(2倍)して、1芯1310nm×(4芯送信・4芯受信)します。同様に400GBASE-DR4は、50GをPAM4変調(2倍)して、1芯1310nm×(4芯送信・4芯受信)します。ベースとなるデータ量が25Gか50Gかの違いがありますが、線路(光ファイバの配線)に対する仕様が変わらないため、両規格併せて考えます。

表3 200GBASE-DR4と400GBASE-DR4

(3)-2 MPOコネクタ

図5に示す12芯MPOを用います。IEEE802.3baの40GBASE-SR4で利用していたコネクタと同様のコネクタですが、今回はMMFではなく、SMFのMPOとなります。40GbEのMPOパッチコードは、中の光ファイバの種類が違うため、使い回すことは出来ません。

図5 12芯MPO

送信/受信で利用する光ファイバの位置は、コネクタ中心にあるキーを上に見て左側4芯が送信、右側4芯が受信となります。真ん中の4芯(白抜き)は使いません。最近は真ん中の○で示している4芯を抜いて、敢えて8芯仕様のMPOコードも販売されています。12芯全てを利用したい時には使えませんが、機器間直結など、8芯しか使わないことがはっきりわかっている場合は、無駄なく芯数が使えます。

(3)-3 チャネル損失

図6に示すコネクタ間の部分の損失が3dB以下、最大距離が500mとなります。

図6 200GBASE-DR4・400GBASE-DR4のチャネル長と損失(四角内数字は芯数)

基本は2か所の接続点を含みます。図3のように、MPOケーブルとMPOコードを接続する方式でも大丈夫ですが、今回はMPOカセットを使った方式を考えてみましょう。理想的な芯数の使い方として、真ん中は12芯MPOのトランクケーブルを利用し、端末では8芯のMPOコードを利用すると、芯数に無駄がありません。
この時のコネクタの接続損失はどう考えればよいでしょうか?厳密にいえば、MPOカセットとMPOコードの接続(接続点A1、接続点B1)と、MPOカセットとMPOケーブルの接続(接続点A2、接続点B2)の4か所になってしまいます。一か所当たり0.75dBだとすると、4か所で3dBとなってしまい、MPOカセットは使えないかと心配する方もいらっしゃるかと思います。MPOカセットを市場に出す当初は懸念があったのですが、結局「規格値として今までは0.75dB/一か所と考えてきたが、実測値はもっと低いためチャネル損失は実測値ベースで考えよう。ということになりました。そのためほとんどのメーカがMPOカセットの仕様に、「最大損失値」もしくは「平均損失値」を示しているようです。ですので、配線が終了した段階で、MMFの損失値同様、SMFのMPOの損失値を実測し許容範囲内に入っていることを確認してください。

一点確認しておかなければならないことは、DR4の規格では損失値だけでなく、接続点の反射減衰量も規定されています。接続点A1A2B1B2全ての反射減衰量が37dBよりも良い特性であることが必須です。カセットを利用して、ラック間を接続している場合、接続点A2B2の部分はデータセンター等提供事業者に確認するしかありません。また、MPOカセットから機器までの自分たちで用意するMPOコードも、必ず「反射減衰量の特性の良いもの」を選ぶ必要があります。反射減衰量の特性の良いものは、損失も低く抑えられますので、具体的には、「低損失MPO」とか「斜め研磨MPO」と表記のあるタイプを用意してください。もちろん、接続時には、カセット側を含め清掃を忘れないでください。

それ以外に、図6の配線を行うためには、MPOケーブル、MPOカセット、MPOコードのクロスストレート(Method A、Method Bと呼ばれている考え方です)、またコネクタピンの有無など、コネクタや光ファイバの特性以外にも考慮しなければならない点がいくつもあり、複雑さを増しています。現状は、単一の光配線提供事業者にシステムを組んでもらうことが失敗しない唯一の方法になっているようです。MPOシステムを販売している各社の良いとこ取り的な配線システムを構築するには、十分に知識を持った配線技術者と相談しながら進めることがベターです。

(4) 200GBASE-FR4~400GBASE-LR8
(4)-1 仕様概要

次に、200GbE/400GbEのそれ以外の規格について、確認しておきます。こちらは、今まで通りの2芯LCコネクタを用います。利用する波長は、複雑な道を進みつつあります。

表4 200GBASE-FR4~400GBASE-LR8

表4に、それぞれの規格の線路に求められる条件です。利用波長の( )で示されている波長は、それぞれのレーンの波長です。200Gの場合、25G×PAM4(2倍)×4レーンで送受信しますが、FR4とLR4では利用するレーンの波長が違います。ネットワーク技術者は両端のモジュールさえFR4かLR4かを間違えなければ、リンクは上がるのです問題ありません。しかし、トラブルシューティングする時など各レーン毎の損失値を求めるのは、とても大変になりました。400Gの場合は、FR8 もLR8も同じ波長とは言え、200Gの波長+αの波長を測定しなくてはなりません。参考に100Gで利用されている主な仕様について表5に示します。見てわかる通り、こちらもまた微妙に違っています。更に各光モジュールベンダー毎に、それぞれのレーンの波長も違っていると思います。

表5 100Gの仕様例(抜粋)

100G導入時は、それぞれのレーンの損失値を測定するケースも多々ありました。しかし、これから100Gから200G~400Gを利用していくに当たり、このようなレーン毎の波長をどう測定し、運用に落としていくかが課題となりそうです。

(4)-2 LCコネクタとチャネル損失

利用するLCコネクタの反射減衰量は、SMFであれば、通常PC研磨(<25dB)、国産LCコネクタ付きコードの場合は、SPC(<40dB)以上のものがほとんどです。そのため、DR4であれだけ厳格に規定されていたコネクタ部分の反射減衰量も、FR/LRは特に気にしなくて済みます。また、チャネル損失もFRで4dB以下、LRで6.3dB以下となっているため、SRやDRと比べ、多少の損失マージンがあります。データセンター内など接続点が多い場合、また一部MPOカセットを利用している場合は、反射減衰量と損失に気を付けなければなりません。

(4)-3 FRとLRのシームレスな利用

DR4とFR/LRは、コネクタ形状や反射減衰量、利用芯数が全く違いますので、上位コンパチが望めません。しかし、FRとLRでは、損失値によってFRの光モジュールかLRの光モジュールを差し替えるだけで、コネクタは同じものを利用することができます。上位拡張性が望めるところが本規格の良いところかと思います。

(5) MPO共通事項

DR4及びSR16で利用する24芯/12芯MPO及び32芯/16芯MPO共通で必要な内容について確認していきます。

(5)-1 清掃

MPOコネクタも、単芯のLCやSCのコネクタ同様、清掃して使いましょう。24芯/12芯MPO用のクリーナーを用いて32芯/16芯MPOは清掃できません。先ほど説明したように、コネクタピンの間隔が、32芯/16芯MPOの方が、24芯/12芯MPOよりも広くなっているからです。24芯/12芯用のクリーナーでは、32芯/16芯MPOのピンに近い側の光ファイバ端面を十分綺麗に拭くことができません。そのため、幅広の32芯/16芯専用のクリーナーが必要になります。見た目同じに見えますが、幅が若干違います。

図7 MPO用クリーナー例 (左側:写真提供NTT AT)(右側:写真提供AFL)

このような乾式タイプが主流を占めていますが、変化球的に登場したのがGelタイプです。

図8 Gelタイプクリーナー例 (製品提供:扇港産業)

図8に示すクリーナーは、MPOのコネクタピンを含めたすべての面を清掃するという考えで作られたクリーナーです。先ほどの2社はMPOのコネクタピンの間の光ファイバのみを清掃するという発想でした。そのため、12芯用/16芯用と使い分けをする必要がありますが、このクリーナーはコネクタ面を全て清掃しますので、考え方が全く違います。このタイプは、かん合(接続すること)時のMPOコネクタのコネクタピンとホール(穴)の両方の清掃にも役立ちます。

(5)-2 測定概要

32芯単位、8芯単位での利用が始まると、どうしてもそれに合致した測定器が必要になってきます。単芯にばらして測定するには、芯数が多く、また、図4の形状のコードなどを用意しなければならないため、測定系の複雑さを増してしまいます。そこで多芯を一括で測定できる測定器を確認します。

(5)-3 端面検査

最近は端面検査の必要性を感じている方もいらっしゃるかと思います。コネクタ端面に汚れがある場合は、単に光ファイバ同士のかん合が悪くなるだけでなく、損失増や反射減衰量の低下など、光ファイバの先端部分のトラブルのほとんどを確認することができます。単に光ファイバ端面の汚れを見るものから、その汚れ具合が規格に合致しているかどうかの合否判定をしてくれるものまで様々です。
図9に、viavi(ビアビ)ソリューションズ社のSidewinderを示します。12芯MPOから32芯MPOまで設定1つで全自動測定&判定までしてくれる優れものです。

図9 Sidewinder (写真提供:VIAVI Solutions Inc.)

左側の先に、MPOコネクタ(メス)を挿入し、スタートボタンを押すと、(12芯MPOの場合)約12秒で右のディスプレイに全ての芯の合否と、端面の状態が映し出されます。コネクタピンがあっても無くても測定可能です。viavi社以外にも、全自動測定は、EXFO社のFIPT-400-MFが対応しています。

図10 FIP-435B (写真提供:EXFO社)

こちらは、ディスプレイ(PCやスマホの画面でOK)と測定器の分離タイプです。測定器=ディスプレイ間を無線LANで接続できるため、測定する手元は非常にシンプルです。判定は、測定器のランプの色で確認、もしくはディスプレイで確認する仕様となっています。
その他各社いろいろ製品を提供し始めています。単芯だけの測定器は、手動でフォーカスを合わせるものが安価に出回っていましたが、32芯を手動でフォーカスを合わせて測定することは、もう無理なので、全自動測定は必須だと感じています。測定から判定まで一気通貫で行える測定器や、測定するだけ・判定は別ソフトウェア(ライセンス)が必要な場合など、機器やメーカによって、費用の範囲がばらばらです。購入の際は、使い勝手の他、ご自分たちのやりたいことをメーカの営業さんと相談しながら進めて頂ければと思います。

(5)-4 損失検査

損失も端面検査と同様に、多芯を自動で測定してくれるものが望ましいです。

図11 MPO測定器例(MultiFiber Pro 写真提供:フルークネットワークス)

図11は、MPO対応の光源/パワーメータです。写真は、両方パワーメータになります。12芯MPOの片端を左の測定器に挿入し、もう片端を右側の測定器に挿入すれば、自動で、12芯全てを測定してくれます。極性のマッピングをしてくれるため、どの芯がどの芯と接続されているか、一目でわかります。フルークネットワークスの場合、SMFとMMFの測定において、パワーメータは1台で全て賄えますが、光源は波長ごとに購入する必要があります(MMFの850nmで1台、SMFの1310nmで1台、SMFの1550nmで1台)。

それ以外ににも光源/パワーメータの別売で測定器を提供をしているメーカーもあります。

図12 パワーメータ(左)と光源(右) (写真提供:西川計測)

12芯もしくは24芯MPOのコネクタを挿入することで、光モジュールからのパワーを測定することができます。光源は光モジュールの発光素子で代用し、パワーメータだけで良いという場合もあるかと思います。そういう時には手軽に購入出来て便利です。
ご自分たちで何を測定したいのか?ネットワークエンジニアであれば「リンクが上がる」ことを確認するための測定になると思います。「リンクが上がるかどうか」は何を調べればわかるのか?そこを突き詰めて考えて測定器を選びたいですね。また、2018年夏現在、多芯専用の測定器は、まだまだ各社とも十分に出揃っている訳ではありません。時間が許すならば、もう少し製品が出揃ってから比較する方が良いかも知れません。

(6) まとめ

2018年6月からIEEE802.3bsの規格がフリーでダウンロードできるようになりました。規格に示されているMPOコネクタと、その配線のポイントを中心に規格について確認しました。

参考

IEEE Xplore Digital Library:(要登録)
株式会社フジクラ
AFL
NTTアドバンステクノロジ株式会社
株式会社扇港産業
VIAVIソリューションズ
EXFO
フルークネットワークス
西川計測株式会社

本ブログの情報につきましては、自社の検証に基づいた結果からの情報提供であり、
品質保証を目的としたものではございません。

投稿者: saeki takako

データセンター内外の通信配線について、お客様のコンサルティング等を行っています。