2018年1月18日

はじめまして。データセンターの運用管理部門に所属している岩川です。同部門では、空調設備の効率向上に向けた取り組みも行っており、2017年11月9日に寄稿した朝比奈らと共にデータセンターの最適化の1つとしてIT機器の冷却管理や空調の効率向上に努めています。

サーバ室や電算室における空調効率の向上に関して、私が普段から思っていることがあります。空調の効率向上施策事例は多く紹介されていますが、どのような「考え方」で取り組めば良いのか?という視点で書かれている文献が少ないことです。

そこで、「空調の効率向上の考え方・対策」について自分なりにまとめてみましたので、参考程度またはヒントとなれば幸いです。

空冷式パッケージ型空調機について

サーバ室や電算室で広く使用されている空冷式パッケージ型空調機から説明させて頂きます。空調機の仕事は、室内で発生したIT機器の排熱を冷媒管の中のガスに移行させ室内を冷却します。そして、IT機器の排熱を屋外まで運搬し、その熱を屋外の空気を使って捨てます(=空冷式)。

空冷式があれば、水冷式もあります。水冷式は、IT機器の排熱を水(冷却水)を利用して捨てます。ビルの屋上によくある「冷却塔」というものが該当します。

空冷式は、水冷式より構築費が安価となるため、広く採用されています。送風機と圧縮機とコイルがパッケージ化された空調機をパッケージ型空調機といいます。今回ご紹介する「効率向上の考え方」は、空冷式パッケージ型空調機の床下吹出しタイプが対象となります。

空調機の効率向上に関わる部品

空冷式パッケージ型空調機は室内機と室外機で構成され、主に以下で示す①~④の部品で冷風を作ることができます。つまり、この4部品をうまくコントロールすれば空調の効率が向上します。各々の構造と役割を説明します。

①「送風機」:主にモーターとファンで構成されています。ファンの回転速度は空調機の吸込温度、吹出温度などの条件で決定されます。従って、効率向上という視点においては、室内機の吸込吹出の温度を適正にコントロールすることが重要となります。

②「室内機のコイル(冷却)」:冷たい冷媒ガスが通る銅管に室内機が吸い込んだ風を接触させ冷風を作る所であり、IT機器の排熱を吸収する所でもあります。

③「圧縮機(コンプレッサー)」:圧縮機の内部には、空気を圧縮するためのスクリューが組み込まれており、高速回転しています。この高速回転に大量の電力がかかります。この回転をいかに抑えるかが効率向上のポイントです。

④「室外機のコイル(放熱)」:吸収したIT機器の排熱を屋外に放出する所です。

 

今回は①「送風機」の効率向上についてご説明いたします。

 

「送風機」の効率向上の考え方

送風機の効率向上とは?

IT機器を適正に冷却させながらも、送風機の稼働台数を減らしたり、ファンの回転速度を遅くすることで、「送風機電力を低減」させることとなります。しかし、これらを行う場合はIT機器など冷やしたい物に冷風が届きにくくなりますので、「冷風の勢いを確保」しながら行うことが重要となります。これら「送風機電力を低減」と「冷風の勢いを確保」をバランス良く行うことで「送風機の効率向上」が適正に達成されます。

●送風機の電力を低減する

多くのデータセンターにおいて、室内機から床下に吹き出された冷風は、床下空間全体に供給し床下全体を冷却しています。

「床下空間全体に供給」=「送風機の電力がもったいない」と考えます。

そもそも床下空間は、室内機からIT機器周辺まで冷風を届けるための通風ルート(ダクト)であり、冷却する所ではありません。送風機電力の低減は、送風機の稼働台数を減らしたり、ファンの回転速度を遅くすることです。つまり、送風機から吹き出される風量を少なくすることで送風機の電力は低減されます。風量の単位は[m³ /h]で表されます。体積の単位は[m³ ]です。つまり、冷風が供給される床下空間の「体積」を小さくすることが重要となります。

●冷風の勢いを維持する

IT機器を冷却できているか?できていなか?の外的判断は、「IT機器周辺の温度」となります。IT機器周辺の温度を適切に維持する方法の1つが、室内機から出たままの「冷風の勢い」を落とさずにIT機器まで運搬することです。そのためには、以下のア)、イ)、ウ)が重要となります。

ア)室内機から床下に吹き出された風の流れの問題点を知る

室内機から床下に吹き出された冷風は、全て前向き(IT機器設置方向)に流れていません。左右そして後ろ方向にも流れ、IT機器が設置されていない全く関係ない方向にも流れています。更には、サーバ室や電算室以外の部屋に冷風が漏れている場合があります。つまり、IT機器が設置されていない方向に流れた風の勢いが「もったいない」ということです。また、冷風が通過する床下に配線ケーブルや配管などがあると障害物となり、風の勢いを弱める要因となります。

イ)室内機に内蔵されている送風機の特性を知る

室内機に内蔵される送風機の種類は、一般的に「両吸込多翼送風機」が採用されます。

<長所>少ない消費電力で大量の風を送風することができる。

<短所>風の力(風圧)が弱いため遠くまで届けにくい。

送風機の特性から、室内機から吹き出された風は、もともと勢いが弱まりやすいという性質を持っているということです。

ウ)床下から床上に冷風を必要な風量だけ吹き上げさせる

室内機から最遠のサーバラックまで冷風を送るためには、床下から冷風が吹き上がるグレーチングの開閉シャッターにて風量調整を適切に行うこととなります。1箇所のグレーチングから大量の冷風を吹き上げすぎると、最遠のグレーチングで冷風が不足してしまいますので、シャッターの開閉度合の調整は重要となります。

グレーチングに開閉シャッターがない場合の風量調整は、冷風が不要な場合はグレーチングを穴が開いていないフロアパネルに交換することとなります。

 

  • 以上のことを踏まえた「送風機」の効率向上の考え方

考え方:冷風が供給される空間体積を減らす。

考え方:室内機から吹き出された風が、床下の障害物に接触しないようにする。

考え方3:室内機吹き出し直後の冷風の「向き」を整える。

考え方4:サーバ室や電算室以外へ冷風が逃げないようにする。

考え方5:床下から床上に吹き上げる風量は、必要な分だけとする。

 

「送風機電力の低減」の対策事例

上記の考え方1~5を実施したことで、送風機電力の低減が達成された弊社DCでの対策事例を紹介させて頂きます。

考え方1、2

床下に通風ルート(ダクト)をシートなどで構築しそのルートだけに冷風を通過させる。

通風ルートは基本的にIT機器の冷却すべき空間(=コールドアイル)の真下に構築します。そのため、冷却する必要のないサーバラックの真下やサーバ排熱エリアの真下には冷風が通らなくなり、床下空間全てに供給されず冷風の供給体積が減ります。つまり、風量を減らすことができます。また、通風ルート構築で床下のケーブル類などの障害物による抵抗が緩和されるので冷風の勢いが維持しやすくなります。

考え方3、4

室内機の吹出口周りに板やシートなどを取り付け風向きを整えます。更にサーバ室、電算室の床下の外周側面にシートなどでふさぎ、他室へ冷風を送らないようにする。

室内機から出た冷風全てをIT機器が設置されている方向に供給できるようになります。また、サーバ室や電算室の床下外周をふさぐことで、他の用途の部屋(廊下、前室、荷捌き室、IDF室、MDF室など)に風を送らないようになります。サーバ室の床下空間だけを密閉させるイメージです。

考え方5

IT機器の使用電力や周辺温度、サーバラックの使用状況に応じ、グレーチングの開閉具合を調整する。

「IT機器の使用電力が高い所」「IT機器の周辺温度が高い所」は、グレーチングを「開」にして冷風を多く吹き上げますが、「過剰に冷風が吹き上がり過ぎて冷え過ぎている所」や「IT機器が設置されていないサーバラック」は、グレーチングを「閉」にします。このように冷風が無駄に吹き上がり過ぎないようにすることで、最遠でも「冷風の勢いの維持」を可能とします。

 

以上が送風機に対する「効率向上」の考え方と対策事例となります。

本ブログの情報につきましては、自社の検証に基づいた結果からの情報提供であり、
品質保証を目的としたものではございません。

投稿者: 岩川

データセンターの運用管理を行っています。 お客様の利便性向上と運用管理の適正化に努めています。