2017年7月27日

こんにちは、佐伯尊子です。

100GbE規格と配線についてのアレコレについてのお話し、前回に引き続き第三回目となります。今回は小ネタと思ったのですが、今までの総括と2017年末~2018年初頭に規格制定が予定されている200GbE, 400GbEの物理層についてお話します。

(1) 光LAN概要

今選んだ規格や光ファイバを確認しやすいように、光LANの簡単なモデル図を用いて説明します。図1に概要図を示します。


図1 光LANモデル図

ここで、このモデルを3つのパーツに分けます。

(a) スイッチ(上位)側モジュール~光コネクタまで
(b) 光ファイバ部分 (チャネルのコネクタを除いた部分)
(c) 光コネクタ~サーバ(下位)側光コネクタまで

と、本説明のために便宜的に分けます。

(2) 10GbE

まず10GbEから確認しましょう。(a)と(c)は、1対1対応です。そのため、構成がシンプルです。

表1 10GbEの光モジュールと光コネクタ<(a), (c) の選択>

表の中の数字は、モジュールの数を示します。10GbEが利用され始めたころは、XENPAKというSCコネクタベースの光モジュールを利用していましたが、現在ではそのほとんどが、LCコネクタベースのSFP+になっています(赤枠)。このとき気をつけるのは、(a)と(c)は、光モジュールや、コネクタの形状は、XENPAKでもSFP+でも大丈夫です。しかし、利用する光ファイバの種類はMMFかSMFのどちらかに統一する必要があります。

表2 利用する光ファイバに対する条件<(b)の要求事項>

10GBASE-SR を用いて実現できる具体例として、(a)(c)が SFP+のLCコネクタ、(b)はMMF(OM3もしくはOM4) が挙げられます。ラック内でTORスイッチとサーバ間の接続に利用するのであれば、距離は数mですので、チャネル挿入損失は殆ど考えずに済みます。挿入損失が2.6dB以内であれば、10GBASE-SRの光モジュールの接続に用いる光ファイバは、OM3でもOM4でも問題無いことが分かります。
10GBASE-LRもしくは10GBASE-ER を用いる具体例は、(a)(c)がSFP+のLCコネクタ、(b)はSMFが挙げられます。距離が300mであっても、損失が2.6dBを超えてしまった場合は、たとえ構内配線であっても、10GBASE-LRの光モジュールと、SMFを利用することになります。ただ、(b)の部分の損失が、3dB程度の場合は、光源の光パワーが強すぎて、受光側の許容受光レベルの範囲を超えることがあります。その時は光アッテネータを用いて、わざと(b)の部分の損失値を大きくするなどの工夫が必要になることがあります。
(b) の部分が数km以上を想定している時は、SMFの損失値に左右されます。特にキャリアのダークファイバを用いた伝送を考える場合は、この損失を先に確認しておきましょう。せっかく物理距離が10km以内だから10GBASE-LR用の光モジュールを先に用意していても、損失値が6.2dBを越してしまうと、リンクアップしないことになります。

その他、形状が似ているからといって、片側にSFP+、片側にSFP (1GbE対応の光モジュール)を挿して「リンクが上がらない」と慌てることがあります。光ファイバの場合は、メタルケーブルと違って、両端の光モジュールの速度が合わないと、リンクアップしません。光モジュールにSFPかSFP+か表記がありますので、よく確認してくださいね。

(2) 100GbE

40GbEは省略し、100GbEについて詳解します。
(a)にあてはまる組み合わせは表3及び表4になります。規格毎に分けたのは、IEEE802.3baの100GbE伝送と、IEEE802.3bmの100GbE伝送では、同じ100GbEであっても、10GbE×10で実現しているのか、25GbE×4で実現しているのかの違いがあるため、(a)と(c)の機器に、形状だけで判断した光モジュールを挿入しても、リンクが上がりません。

表3 100GbEのスイッチ側光モジュールと光コネクタ (IEEE802.3ba)<(a)の選択>

表4 100GbEのスイッチ側光モジュールと光コネクタ (IEEE802.3bm)<(a)の選択>

この中で、赤枠で囲っているCFP2は、アーリーユーザーの利用で、今はほとんどがQSFP28に移行しているようです。また、青抜きの表示であるOM5及びμQSFP28は、最新の技術になり、市場に出始めている、もしくはこれから市場に出る予定の項目になります。

次に(c)部分、サーバ側の光モジュールです。

表5 サーバ側の光モジュール (IEEE802.3ba)<(c)の選択>

表6 サーバ側の光モジュール (IEEE802.3bm)<(c)の選択>

100GbEの大きな特徴として、スイッチ(上位)側が 100GbE、サーバ(下位)側が 10GbE×10もしくは25GbE×4の組み合わせが可能になりました。というもの、IEEE802.3baが制定された2010年当時、 40GbE/100GbE の規格を策定する際、大幅な見直しがなされました。10GbEまでは1本の光ファイバに1波長だけで伝送したい速度を実現させていたのですが、40Gや100Gを1本の光ファイバに1波長だけで実現するのは、技術的に非常に難しかったため、10芯もしくは4波を1芯に並列伝送させる技術MLD(Multi Lane Distribution) が考え出されました。これによって、100GbEのデータは、10Gbps/25GbE単位でアライメントマーカ (Alignment Marker) を付けることで、100GbEの機器と10GbEもしくは25GbpEの機器間をスムーズに接続することが可能になりました(詳しくは、本連載(1)をご参照ください)。この時利用するケーブルをブレークアウト(Break Out)ケーブルもしくはファンナウトケーブル (Fan-out-cable) といいます (図2) 。


図2 ブレークアウトケーブルの例 (株式会社フジクラ/ The Siemon Company より)

両端ともコネクタのもの(図2左)、両端にモジュールがついているもの(図2右)、の2種類あります。モジュール間を接続するケーブルの種類が同軸であれば、だいたい3m, 5m, 7mのDAC (Direct Attached Cable) 、光ファイバであれば、最大300m程度の長さを持つAOC (Active Optical Cable) になります。表5(表6)の黄色で示されている項目は、このブレークアウトケーブルを用いて、10GbE×10 (25GbE×4) が接続できます。

次に100GbEの(b)の部分を確認しましょう。

表7 100GbE (IEEE802.3ba)<(b)の要求事項>

表8 100GbE (IEEE802.3bm及びbm準拠の場合)<(b)の要求事項>

10GbEに比べると結構複雑になってきました。
(c)部分は、1対1で100GbE接続をする場合の他、先ほど示したブレークアウトケーブルを用いて、10GbE (もしくは25GbE)に分割して各機器と接続します。ただ、分岐して利用する場合であっても(b)の部分は表7及び表8で示した100GbEの(b)の条件になることに気を付けてください。
また、IEEE802.3bmでは、100GbEを実現するために、単に光源側は光のオンオフだけで信号を判別するNRZ (FEC無)の方式の他、PAM-4と呼ばれる送信信号に変調をかけて、光源のオンオフを4段階に変化させる方式 (FEC有)を採用することにしました。それに伴い、(b)に対する要求が、損失だけでなく、「反射減衰量」についても注意する必要が出てきています(詳しくは、本連載(2)参照)。光モジュールを選ぶ際、単に機器側から導き出されるCFP2やQSFP28という形状だけでなく、(b)の部分の損失/反射減衰量を確認して、同じ形状でも「FEC有」「FEC無」を考慮した光モジュールを選ぶ必要が出てきました。

(3) 200GbEと400GbE

今年末~来年初めに制定予定のIEEE802.3bsによる200GbEと400GbEについて説明します。本規格も200GbEと400GbEの2速度の制定を予定しています。100GbEの規格同様、1対1接続のほか1対多接続も考慮しており、分岐の種類は、100GbEより更に複雑になります。100GbEでアライメントマーカーを挿入した速度(25GbEや50GbE、100GbE)がベースとなり、それを掛け合わせて200GbEや400GbEを実現します。そのため、ベースの速度である25GbEはIEEE802.3by (MMF)として2016年にいち早く規格を制定しました。同じ25GbEでもIEEE802.3cc (SMF)は、現在規格制定中です。そのほか50GbE、100GbEもIEEE802.3cdとして規格制定中です。
(a)に当てはまる組み合わせは表9になります。

表9 200GbE (IEEE802.3bs)<(a)の選択>

表10 400GbE (IEEE802.3bs)<(a)の選択>

そして(c)側ですが、実はこれが凄いことになっています。

表11 200GbEと400GbEの1対1もしくは1対多接続例 

実は、表11のコネクタや光モジュールを含めた表を考えたのですが、かえって分かりづらくなってしまったので、今回は光モジュール形状やコネクタ形状を示すことはあきらめました。光モジュールだけでも、図3に示すように、沢山出ています(更に7/13に、新たにSFP-DDのMSAが発足したと発表がありました)。なお、(bs)や(cd)の表記は、制定済みもしくは制定予定のIEEE802.3の各規格の末尾のみを記しています。このように、200GbE/400GbEは、25G/50Gの規格と密接につながっていることが分かります。


図3 100GbE超の光モジュール類例

更に100GbE超の接続は、光モジュールだけでなく、モジュールを挿入する受けスロット側も、分岐を考慮した形状が開発されています。例えば、QSFP-DDの場合、1スロットタイプ(図4)と、2スロットタイプ(図5)があります。このQSFP-DDは、QSFP-DDとQSFP28のどちらの光モジュールも挿入することが出来るため、CFP8やOSFPと比べ、下位互換性が期待されています。


図4 1スロットQSFP-DD


図5 2スロットQSFP-DD(上段がQSFP-DD、下段がQSFP28が挿入されていると思われます)

QSFP-DDの場合、上下のスロットに100GbE (IEEE802.3bm)のQSFP28 を挿入すれば、機器に200GbEを提供することが可能です。また、上下に200GbE (IEEE802.3bs) のQSFP-DDを挿入すれば、400GbEが実現可能に。更に将来的には400GbE (IEEE802.3bs)のQSFP-DDを2本差せば800GbEも可能になるそうです。そして、(a)の部分で、2スロット対応し、更にその反対側の(c)の部分が、25GbE×8やら、50GbE×4やら、100GbE×2やらと対応できるように規格上作っていますので、配線や接続が更に複雑になっていくことが予想されます。

最後に(b)の部分についてです。

表12 200GbE (IEEE802.3bs) <(b)の要求事項>

表13 400GbE (IEEE802.3bs) <(b)の要求事項>

まだ不確かな情報が多いのですが、200GbE/400GbEについても、光ファイバに対する損失値等、厳しい要求が出ているようです。400GbEは、FEC有(PAM-4変調)が標準となりましたが、200GbEは100GbE同様FEC有とFEC無が混在します。更に、利用するレーンの速度や、利用芯数など、最後の最後まで議論を重ねているようで、なかなか明確な答えが出ていません。(3)項は、あくまでも2017年6月末現在の情報となります。

(4) まとめ

本連載では、光ファイバを中心にまとめてきましたが、実はメタルケーブルの高速化も進んでおり、40GbEまではシールド付のツイストペアケーブルが標準化されています(IEEE802.3bq Categoly8)。まとめとして、1GbE~400GbEについて、ツイストペアケーブルと光ファイバを合わせて一覧表にしました。「規格ごと(表14)」「(b)のケーブル種別ごと(表15)」「(b)の距離ごと(表16)」です。それぞれ字の薄いものは、規格制定前、黒字は既に規格が制定されているものになります。

表14 規格ごとのまとめ

表15 ケーブル種別ごとのまとめ

表16 距離ごとのまとめ

(5)最後に

10GbEから400GbEまでの光モジュールや、コネクタ、光ファイバについて、2017年6月現在で分かるところまでをまとめました。100GbE以降、光ファイバに対する要求、利用する光コネクタなどが多岐に渡っています。これからも、規格と光ファイバについて、注意深く見守っていきたいと思います。ひとまず本連載は今回をもって終了します。ありがとうございました。

【参考】
IEEE802.3 ETHERNET WORKING GROUP
CFP-MSA
QSFP-DD MSA
OSFP MSA
SFP-DD MSA

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品質保証を目的としたものではございません。

投稿者: saeki takako

データセンター内外の通信配線について、お客様のコンサルティング等を行っています。