2017年6月15日

Cloud&SDN研究所岩本です。
今回は、5月8日〜11日まで開催されたOpenStack Summit Bostonに参加してきましたのでレポートさせていただきます。
OpenStack Summitに関しては、以前も書かせて頂きましたので、詳細はそちらをご参照ください。OpenStackとは、Cloud環境を構築するためのオープンソースソフトウェアの事です。そしてOpenStack Summitは、OpenStackの技術的な議論や基調講演がメインのカンファレンスです。また、今回OpenStackに関する事以外にもOpenSource Daysという名目であらゆるオープンソースソフトウェアに関するカンファレンスが開催されました。

まずSummit全体の変更点としまして、今回のSummitから開発者向けのイベントが別開催になりました。それに伴って参加人数は、少し減った印象を受けました。
それだけOpenStackがソフトウェアとして成熟したことの現れなのかもしれません。
参加者の累計情報は、Summit終了後に公式サイトのWebページに、国別で63ヶ国、会社別で1,014社、参加者5000人以上と表記されていました。
また日本企業からは、約100人程参加されていました。

Keynoteセッション

Keynoteセッションでは、最新のCloud関連技術の動向やユーザーのユースケースに関する基調公演があります。
まず1日目は、OpenStack Foundation Executive DirectorであるJonathan Bryceの公演から始まりました。
今回キーワードとして出ていたのは、Container,Multi-Cloud,NFV,Edgeといったキーワードが非常に多く出てきました。例年も同様のキーワードが出ますが、特にコンテナに関して非常に多いという印象を受けました。

ユーザーの基調公演では、Verizon,AT&T,US ARMY CYBER SCHOOL,eBayが発表していました。

まずVerizonの発表では、Edge Computingソリューションを発表していました。通称”Cloud in Box”と呼ばれるCPE(Customer Premises Equipment)を用いたSDWANソリューションに関する公演でした。このCPEは、X86ベースのプラットフォームであり、その中でKVMハイパーバイザーを動かしOpenStack環境を構築しています。デモでは、マウスでセキュリティのファンクションを選び、適応させたりすることで、デプロイの簡単さがとても伝わりました。GUIの統合環境から複数拠点に対してネットワーク機能の追加・可視化ができる非常に完成度の高いものだと思いました。

 

AT&Tの発表では、Entertainment Groupが発表を行い、コンテンツ配信システムへの応用に関しての発表がありました。積極的にオープンソース・ソフトウェアを取り入れて配信システムを構築しており、エンコーディングから配信まで、すべてをOpenStack内で行っているとの事です。今後の展望に関しては、コンテナ等の技術を用いてコンピューティングリソースを抽象化していく事に注力するそうです。

eBayの発表では、大規模サービス環境に対してKubernetesを適応した事例を紹介していました。またtessmasterと呼ばれるマルチクラウド環境で、コンテナクラスタを管理するためのソフトウェアに関する紹介がありました。マルチリージョン環境で構成されたコンテナクラスタ環境をうまく可視化し、非常に感覚的でユーザビリティの高いUIで管理する事が可能です。


また公演の中でユーザーアンケートに関する発表で「あなたのOpenStack環境でどのようなアプリケーションが動いていますか?」という質問に対し、Kubernetesと答えたユーザーが45%という半数近くの結果を得ており、コンテナ技術への注目度は、かなり強くなっていると感じました。

また最も驚いたKeynoteセッションは、やはり2日目のMark CollierとEdward Snowdenの対談でしょう。画面越しではありますが、シークレットゲストとして登場したので非常に会場を沸かせました。内容に関しては、OpenStackに関係する話と言うよりもOpenSourceやCloudの在り方などを中心に話されていました。対談は、Youtubeに上がっていますのでご興味のある方はご覧になってください。https://www.youtube.com/watch?v=DIxvFuKY0KM

 MarketPlaceの様子

Market Placeは規模的に、前々回のAustinのときに比べると小さくなったという印象を受けました。

OpenSource Days

OpenSource Daysは、OpenStack Summit会場の隣Sheratonホテルで開催されてました。他の技術的な公演とは異なり、Foundationからのビデオ配信は無いのですが、どのような関係のセッションがあったのか一部まとめます。

OpenSwitch

現在いくつか提供されているWhiteBoxSwitch用OS(NOS)の一つです。Linux Foundationで開発されており、完全なOpenSourceのソフトウェアです。当初はHPEが中心となり開発していましたが、現在DELL EMCとSnapRouteが中心となり、開発が進められています。Debian Jessieベースで開発されておりC/C++/Python/GOといったマルチなプログラム実行環境が用意されています。現在の2.1.1では、L2/L3の基本的な機能に関しては、実装されているようで次期バージョンでは、VxLANやEVPNといった機能が追加される予定です。

OVN(Open Virtual Network)

Open vSwitchコミュニティで開発されている、ネットワーク仮想化に関するソフトウェアの発表です。
ベンダーニュートラルの立ち位置で開発されており、Open vSwitchを用いて仮想ネットワークを構築するための仕組みです。
仮想ネットワークにL2/L3のスイッチング、ACL、Security Groupの機能を提供します。
DevStackの環境上にOVNをデプロイするハンズオンにも参加してきました。ハンズオンの内容は、Open vSwitchのWebサイトにも上がっています。
http://docs.openvswitch.org/en/latest/tutorials/ovn-openstack/

FD.io

Open vSwitchの対抗となる、Ciscoが実装したVPP(Vector Packet Processing)と呼ばれる高速なパケット処理エンジンを持ったデータパス機構です。Packet I/Oの処理には、DPDKが用いられています。Netconf/YANGのAPIを持ちNorthboundをOpenDayLight等のコントローラから操作することを前提として設計・実装されています。主にCisco,Ericsson,Intel,Linux Foundationがメンバーとなっています。

興味深かったセッション

私が聴いたセッションの中で面白かったセッションをいくつかピックアップしてご紹介していきます。

Learnings from Scaling OpenStack Ironic at Yahoo

数百〜数千のサーバを持つYahooがどのようにしてサーバを管理しているのかに関する発表でした。OpenStackによるベアメタルサーバの管理には、Ironicというプラグインを用います。Ironicを構築するには、PXEやIPMI管理を行うためのironic-conductorと呼ばれるサーバを用意します。このコンピューティングリソースの消費は、ベアメタルサーバの数に応じて大きくなっていきます。なぜならば電源の状態を一定期間ごとに同期するため、データベースの書き込み処理が生じます。この問題を解決するために、ironic-conductorの物理サーバ数を増やし、尚且つ一台でマルチホストによる処理をすることにより解決しています。またマルチホストによる処理を行う際には、一般的に用いられるISC-dhcpdではなくKeaと呼ばれるISCで新たに作り直しているdhcpサーバを利用していました。これだけ大きなスケールのユースケースが聞けるのは、我々にとってとてもありがたいです。

Openstack-Helm

コンテナ関連技術に関しては、Openstack-Helmと呼ばれるKubernetesパッケージ管理ソフトを用いたOpenstackデプロイに関するセッションが非常に盛んでした。コンテナベースのOpenStackデプロイ・運用することで、アップデートや監視といったインフラのオペレーションが、非常に簡単になる事が期待されています。現状のバージョンでは0.5であり安定バージョンではありませんが10月にはstableバージョンが出てくると予定されています。今後に期待して私も検証環境で試したいと思います。

まとめ

OpenStackは、開発ペースが速く新しい技術があればすぐ取り入れていく非常に活発なオープンソースコミュニティです。周辺技術の詳細な部分や検証に関しても、今後当ブログで取り上げれればと思っています。

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