2017年4月13日

こんにちは、佐伯尊子です。

100GbE規格と配線についてのアレコレについてのお話し、前回に引き続き第二回目となります。前回示した光ファイバを用いたEthernetの物理層について、少し深堀します。

(1) 100GbEの配線に対する要求を示したIEEE802.3-2015

IEEE802.3の規格は、baとかbmなど、サフィックスのついた規格の部分だけ確認しがちですが、実は本家の802.3そのものも、随時更新されています。そして、最新版である2015年版のSECTION-SIXには、IEEE802.3ba, IEEE802.3bm で示されている40GbE及び100GbEの動作のための一般情報と物理層仕様が含まれています。具体的に、80条~95条及び関連する附属書の情報を元に読み解いていきましょう。

(2) Ethernetの規格と物理要件の確認
(2)-i MMFを使った40GbE/100GbE

それぞれの規格を思い出してみましょう。
表1 MMFを使った40GbE/100GbEの規格(抜粋)

(2)-i-i 光モジュール形状
100GbEの光モジュールとは、GbEでは、GBIC (GigaBit Interface Card) に相当する部分です。機器の電気信号を光信号に変換、もしくは光信号を電気信号に変換する部分です。ツイストペアケーブルと違って、光ファイバの場合は、両端の光モジュールは同じ規格で、同じ速度にしなければ通信しません。例えば、片側が40GbEのCFP、片側が100GbEのCFPの場合、40GbEで送受信しません。また、片側がシングルモードファイバ、片側がマルチモードファイバ用の光モジュールであってもダメです(100GbEは芯数が違うので、まず接続できませんね)。両端のモジュールの通信規格や速度をきちんと合わせておく必要があります。

(2)-i-ii 光ファイバ種類
光ファイバ種類はOM3とOM4となっています。どちらもMMF(マルチモード光ファイバ)の種類の1つです。MMFは元々OM1、OM2、OM3、OM4と4種類ありますが、OMの後の数字が大きくなればなるほど、特性が良くなります。OM1はコア(通信光が通る部分)径が62.5μm、OM2はコア径50μmと、明らかにコア径が違うため、「違う光ファイバだな」と認識しやすかったのですが、OM2と、OM3、もしくはOM4の光ファイバは、全てコア径が50μmのため、金額以外の違いがよく分からないとのお話を聞きます。
OM3、OM4は10GbE以上の高速伝送に最適化されたMMFです。10GbEまではOM1やOM2でも短距離という条件付きで利用できていたのですが、40GbE以上は、OM3とOM4しかサポートしません。既存MMFの利用に関しては、コア径だけで判断せず、表面印刷を確認して「OM3」「OM4」もしくはそれ相当の表記のあるMMFを使いましょう。ちなみに、混在して利用する時は、数字の一番小さいグレートでの利用になってしまいます(下位依存)。

(2)-i-iii 1回線の芯数
10GbEまでは、2芯1回線だったので回線数と芯数については気にならなかったのですが、40GbE以降1回線の芯数が変わってきました。また、速度=1回線の芯数という訳でも無いので、規格と速度、適用する光ファイバを注意深く確認する必要が出てきました。特に100GBASE-SR10は、送信10芯/受信10芯と合計20芯が1回線に必要になるので、接続する機器間全長に渡って、20芯が確保できるかどうか、事前に確認しておきましょう。更に、両端の機器の送信側と受信側がちゃんと一致していることを確認することも必要です(送信同士、受信同士で接続した場合リンクが上がりません)。ただ、VCSELレーザは目視確認しないようにしましょう。可視光外の近赤外線のため、見えないだけでなく覗くことで網膜が怪我をしますので、後ほど示すパワーメータを用いるなどして、確認することが大切です。

(2)-i-iv 光コネクタ
10GbEまで利用していたLCコネクタもしくはSCコネクタから、MPO(もしくはMTPと呼ばれる)多芯タイプのコネクタに変更になりました。コネクタを選ぶ際は、(1)-i-i で示した光モジュール毎に使うコネクタが違いますので、光モジュールに合致したコネクタになるよう注意して選定してください。


図1 光ファイバコネクタの種類
左上がDuplex-SC、左下がDuplex-LC、右2つがMPO (もしくはMTP)

(2)-i-v チャネル損失・最大距離
「チャネル損失」と「最大距離」について、その違いを説明します。
チャネル損失:機器間の最大損失値です。この損失値を上回る損失になると、伝送を保証できません。
最大距離:いくら損失値がチャネル損失の値を下回っていても、伝送を保証できる最大の距離(=帯域)という意味です。
機器間の距離が「最大距離」より短ければ、伝送できると考えがちですが、実際には「チャネル損失以下」でなければ伝送は保証されません。GbEや10GbEは、チャネル損失が7dB以上であるため、100m程度であれば、多少接続点が多くても、まず問題無く伝送できます。しかし、40GbEや100GbEは、チャネル損失の値が非常に小さいです。OM3だと1.9dB、OM4だと1.5dB以下です。最大距離はOM4の方が長いにもかかわらず、損失値が小さいのは、光ファイバの単位長当たりの損失値が、OM3>OM4だからです。コネクタ接続は、光ファイバの種類に依存せず1か所0.5dB~0.75dBとなります。0.5dB/1か所だとすると、2か所あったら、それだけでもう1dBです(光モジュールに接続する部分は省いて下さい)。多段のパッチシステムを組んでいると、あっという間に1.9dB(もしくは1.5dB)を越す可能性があります。そうすると、距離云々の前に、「その損失値では伝送できません」となってしまいます。そのため、利用する光ファイバの損失を事前に確認しておく必要があります(損失値の測定方法については、(2)-ii-iv参照)。
そして、IEEE802.3bmでは、OM3を使ったシステムでは、最大70mまでしか利用できません。100mに届かないことから、OM3もそろそろ限界に近付いてきたことを予感させる距離となっています(ちなみに、IEEE802.3byの25GbEやIEEE802.3cdの50GbEでは、OM4のみの規定となっています)。

(2)-i-vi 利用波長(光源)
光源は光モジュールに内蔵されている出射光になります。10GbE以降の高速伝送はVCSEL (Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)を用いています。これはMMF対応の面発光レーザで、OM3やOM4がこのVCSELに最適なMMFです。OM1やOM2はLED光源(~1GbE)だったのですが、10GbE以降、光源もより高速化に対応できるようになりました。そのため、MMFに対する要求も変わってきたと言えます。

(2)-i-vii 100GbEのMMF利用まとめ
利用する光ファイバはOM3もしくはOM4です。
チャネル損失が2dB以下、芯数も100GBASE-SR10では20芯のため、最大距離にかかわらず損失値や空き芯数に注意して利用しましょう。また、OM3は次のステップである25GbEでは規格外となってしまうことも、頭の片隅に入れておいてください。

(2)-ii SMFを用いた100GbE

それぞれの規格を思い出してみましょう。

表2 SMFを使った100GbE(抜粋)

(2)-ii-i 光モジュール形状
(2)-ii-i と同じ形状ですがSMF用の各種規格に則ったものを利用しましょう。CFPやCFP2の他、QSFP28があります。今は主にCFP2やQSFP28が使われています。形状が同じですが、片側がMMF用、片側をSMF用の光モジュールを機器に挿入しないように気を付けましょう。

(2)-ii-ii 光ファイバ種類
10Gbpsまでは「黄色被覆の光ファイバ」であれば、シングルモードファイバと思っていた方が多いかと思います。しかし、100G時代はSMFの種類を気にしなければならなくなりました。IEEE802.3bm準拠である3つの伝送方式は、全てOS2のみの利用です。

海外製のSMFは、OS1とOS2の2種類が明確になっていますが、国産のSMFは15年以上前からOS2の光ファイバを用いています。そのため、国産のSMFであれば、IEEE802.3bm準拠でも問題なく利用できますが、どのようなケーブルを使っているか分からない、もしくは各規格のSMFが混在している場合は、機器間の光ファイバの損失値を1回線ずつ測定し、利用したい規格の範囲内に収まっていることを確認する必要があります。

(2)-ii-iii 最大距離・チャネル損失値
IEEE802.3bm準拠の場合は、その損失値がIEEE802.3baと比べ、最大距離が大幅に短くなっています。これは、2km程度でどれだけ低電力で100GbEを伝送できるかという目的で、IEEE802.3bmを検討したためです。距離が短くなりますので、損失値も6.3dB→3dB程度と、半分以下になっています。今後はIEEE802.3bm準拠の光モジュールを使う機会が増えてくると思います。それぞれの準拠規格ごとに損失値が違います。1芯ずつ全数測定して、自分たちの使う100GbEの規格の範囲内で利用できるかどうか確認しましょう。

(2)-ii-iv 反射減衰量
SMF利用の40GbE/100GbEでは、損失値以外の特性の1つとして反射減衰量を覚えましょう。これは光ファイバ自体が持つ損失値ではなく、光ファイバのコネクタ同士の接続点で発生する損失について規定したものです。そのためSCコネクタやLCコネクタなど、コネクタの種類の違いではなく、コネクタ先端の白い部分(フェルール)についての規定となります。


図2 反射減衰量の考え方

理想は、コネクタAの左側から光ファイバ内を通ってきた光(赤矢印)が全てコネクタBの右の光ファイバに伝送されることですが、コネクタの接続面で微弱な信号光がもと来た道に戻ってしまうことがあります。この戻り光の量を「反射減衰量」と規定しています。戻り光の量を減らすには、フェルールの研磨方法を、より鋭角にし、戻ろうとする光を寄せ付けないようにするしかありません。光ファイバそのものの種類は、この反射減衰量の低減とは関係ありません。研磨方法の鋭角の具合によってその値が違ってきます。

表3 コネクタ先端の研磨方法と反射減衰量の違い(住友電気工業株式会社Webより)

規格の中で、-26dBを謳っているものは全ての接続点でこの球面研磨を採用していることが必要となります。一般的にSMFのコネクタ先端は、何も指定しなくてもPC研磨を施していることが殆どなので問題ないとは思いますが、気にせず利用していると、対応していないパッチコードなどが混入されている場合もあります。購入時研磨方法が分かる、もしくは反射減衰量の測定値が記載されているケーブルを購入するようにしましょう。
また、IEEE802.3bmに準拠している各100GbEの規格のうち、反射減衰量が-35dBよりも小さい値になるように決められているものもあります。この条件をクリアするには、UPC研磨やAdPC研磨と呼ばれる更に鋭角なコネクタ端面が、複数の接続点すべてに適用されます。この研磨方法は、施工/発注する時に特別に指定する必要があります。また、通常の研磨方法よりも、高価になります。
このように、100GbEでは、単に損失値や距離の規格だけでなく、コネクタ接続点の反射減衰量も加味する必要が出てきました。

(2)-ii-v 損失・反射減衰量の測定
(2)-ii-iiiの「チャネル損失値」、(2)-ii-ivの「反射減衰量」を注意するというのは、具体的にどうすればよいか確認します。これらの配線は1本ずつ測定することです。当然ながら、測定には光ファイバ専用の測定器が必要になります。光ファイバの品質を測定する機器について、簡単に説明します。

●損失測定
光源とパワーメータを用います。(簡略的にはOTDRでも測定可能です)
●反射減衰量
OTDRという専用の測定器を用います。


図3 光源とパワーメータ例 (参考:Appointech, Inc.、グレイテクノス株式会社)


図4 OTDR例 (参考:アンリツ株式会社)

まず、光源とパワーメータ(PM)を用いた損失測定 (LSPM: Light Source Power Meter )法ですが、とてもシンプルかつ重要な測定方法です。
光源とPMを接続し、その損失値P0を測定します。その後、測定したい光ファイバを接続しその損失値P1を測定し、その差Pが損失値となります。PMは数字で示されるので、単に引き算だけで損失値を求めることが出来ます。図は、機器間の接続損失を測定する方法(3ジャンパー法)を示しています。
既存の配線がOS1かOS2か分からない場合は、まずは配線の両端で、損失値を測定し、その値が、規格値以内であることを確認します。規格値よりも大きいときは、利用SMFを替えて規格値に収まるようにすることが大切です。
規格値よりも大きい場合は、コネクタ端面を専用のツールで清掃する、SMFの曲げやひねりなど余計なストレスを与えている場合は、それを解放することが大切です。


図5 損失測定方法 (JEITA資料より)

そして、反射減衰量は、こちらも専用の測定器による測定が必要になります。OTDR (Optical Time Domain Reflectometer) 法と言われるもので、試験機のことをOTDRもしくは光パルス試験機と呼ばれています。利用する光ファイバの途中の状態が分かる測定方法です。


図6 OTDR法概要 (JEITA資料より)


図7 OTDR法で用いる後方散乱光 (JEITA資料より)


図8 OTDR法による測定結果例 (JEITA資料より)


図9 OTDR法による反射減衰量の測定

片端から光を挿入し、微細な戻り光からその状態をグラフ・数値化したものです。左→右に向かって、長さが示され、高さは損失値となります。途中にある接続点など、変化があるところを「イベント」として検出します。コネクタ接続点はグラフの山の状態で示されます。この山の状態からそれぞれの反射減衰量を求めます。図9で示すところにカーソルを合わせて手動で求めることもできますが、現在市販されているOTDRの殆どは、グラフ外に「イベント」の自動表示があり、そこに反射減衰量の数字等が示されています。この数値が -26dB (もしくは-35dB) よりも小さいことを確認します。
コネクタの研磨方法は基準を満たす研磨方法であるにもかかわらず、測定値が基準を満たさない場合は、基準値内に入るようコネクタ端面及び接続アダプタを専用のツールで清掃してください。

IEEE802.3-2015年では、Table 88-14で、この数字が-21dBよりも小さいこと。という規格値になっていますが、実例としてTable 88-19で、-26dBを示しています。そのため、現在市場に出ているモジュールは、-26dBより小さい値でないと、安定したリンクアップにならないようです。

(2)-ii-vi 利用波長
100GBASE-LR4・100GBASE-ER4と、100G-CLR4・100G-CWDM4では使っている波長が違います。規格は、1310nmの1波長での損失値が規定されていますが、実利用すると、1310nmだけでなく、他の利用波長でも損失値を測定した方が、より安定的に利用できるようです。そのため現在100GBASE-LR4・100GBASE-ER4用のパワーメータ (1295nm/1300nm/1305nm/1310nmを固定で測定できる) ものがあります。これにより各波長の損失値が、それぞれ規格値内であるかどうか判定することが出来ます。しかし、IEEE802.3bm準拠の100G-CLR4・100G-CWDM4では、波長が1271nm/1291nm/1311nm/1331nmを利用することになりました。このパワーメータで各波長での損失値を測定する時には、一度メーカーに確認してください。

(2)-ii-vii その他
実は、損失値と反射減衰量以外にも、100GbEでは敷設した光ファイバに対して細かく規定されています。偏波モード分散PMD (Polarization Mode Dispersion)と、その相関値であるDGD (Differential Group Delay)。また TDP (Transmitter and dispersion penalty) についても数値が決められています。これらの規定値に対する解説はまたどこかでお話できればと思います。

(2)-ii-viii SMFまとめ
– 今まではSMFというひとくくりで対応できていましたが、IEEE802.3bm準拠の規格以降は、全てOS2指定となります。OS1かOS2か分からない場合は、必ず測定して、規格値に収まっていることを確認してください。
– コネクタの反射減衰量が-26dBよりも小さいことを確認しましょう。反射減衰量は、通常の光源/パワーメータでは測定できないため、OTDRという専用の測定器を用意しましょう。

【参考】
IEEE802.3 ETHERNET WORKING GROUP
一般社団法人電子情報技術産業協会 (JEITA)

次回は、各規格にまつわる小ネタを予定しています。

以上

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投稿者: saeki takako

データセンター内外の通信配線について、お客様のコンサルティング等を行っています。